スタコラ:2017-04-10

ソンタク

2017-04-10
大隈信夫

 ある日突然、ソンタクは悪者になった。

「多くの人が、僕の漢字さえ知らなかったのに」
ソンタク があったのか、なかったのか」喧々諤々の論議の中で、大急ぎで辞書を引いて、「忖度と書くのか」改めて知った人もいる。

 デジタル大辞泉の解説では、
・[名](スル)他人の心をおしはかること
とある。
 大辞林第三版の解説では、
・(名)スル〔『忖』も『度』もはかる意〕、他人の気持ちをおしはかること、推察
とあり、さらに
・『おしはかる』とは、『ある事柄をもとにして見当をつける(推測する)』という意味で、
・『他人の心を他の事柄を元に推測する』という意味になり、
・『忖』の字源は『「心』と『寸=長さを測る』という漢字の組み合わせで『心を測る』という意味
・他人の気持ちを推測するような意味
・『度』は、『ものさし、はかる、たび、わたる』という意味の漢字
・字源は『席(むしろ)』と『手で広げる』という漢字の組み合わせで席を広げて長さを測ることを表す。
とあった。

 僕は自問自答した。

「僕は、本当にそんなに悪者なのか?」
「僕は、日常生活や仕事の場でも度々ある。例えば、日常の生活の場で良好な人間関係を保つため、他人の思いに心を寄せ配慮するといった生活の知恵としても働いている」
「高齢者の介護施設での僕は、入居者や利用者の皆さんの意を汲み、来し方や思いに寄り添って介護するうえでも重要な役割を果たしてきた」
「障がい者の福祉施設での僕は、利用者の皆さんの病気について理解し、思いやりをもって支援するために、職員として求められる重要なスキルでもあるはずだ」

「どこから僕は、悪者になったのだろう」
「今、問題となっているソンタクとは、どうも 違うようだ」
「本来の『他人の思いをおしはかる』が捻じ曲げられて、権力の顔色を窺って、特定の利益のために行動をとるってことか」

「僕は、そんなソンタクではない」
「僕は、今回の事件に対して多くの人たちの思いや怒りを忖度する」

忖度という漢字

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