スタコラ:2016-02-29

人類の危機

2016-02-29
大隈昭子

 長崎県島原市の島原城内には「北村西望記念館」があります。
 北村西望氏は、長崎平和公園の「平和祈念像」の作者で有名ですが、記念館にはこの平和記念像の制作過程や書なども展示され、野外彫刻園には、14体のブロンズ像などが展示されています。
 この野外彫刻園で私の目を惹いたのは「人類の危機」というブロンズ像です。 2メートルを超える立像は、力強く、しっかりと大地を踏みしめています。
 この作品は、昭和33年作で「平和祈念像完成後の作品。原型は第1回日展(審査員)出品。今なお人類の平和を脅かす争い事に警告を発している。」と紹介されています。

 ブロンズ像の台座には、次のような言葉が彫られていて、現在の世相を予言し、作品を通して北村氏の警告が聞こえてくるようでした。

若し、大事件が突発して、地球上のどこかで、ボタン一つおせば、
どんな大都会でも、一瞬にして壊滅してしまうだろう。

ここらで、人類悉く(ことごとく)が真剣に
考えるべきではないか。

人間のする事は、
人間の幸福のためであらねばならぬと
つくづく祈らずには居られない。

昭和33年8月 北村 西望

 屋内の展示室では、女神像や子どもをテーマにした優しい作品、獅子や虎などの力強い作品、さらに、油絵などもあり、それらの作品の一つひとつから、北村西望氏の優しさや平和を希求する情熱と迫力に魅せられてしまいました。

 島原城には、何度も行き天守閣から島原市内を一望し、キリシタン史料や郷土資料に見入ったことはありましたが、城内に日本彫刻界の巨匠である北村西望記念館があることを知りませんでした。
 多くの人にぜひ訪れていただきたいと思いました。

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