スタコラ:2013-07-15

「本当に安全か?」と思うこと

2013-07-15
大隈信夫

東京電力福島第一原子力発電所の元所長である吉田昌郎氏が、食道がんのため58歳で亡くなった。
吉田元所長は、3年前の6月に福島第一原子力発電所の所長に就任し、おととし3月11日の事故発生の際、現場のトップとして事故対応の指揮を執り続けられたことは、よく知られている。

吉田元所長の死去に際して、2011年3月11日の東電福島第一原発事故直後からの所長が強いリーダーシップに対して、高い評価と英雄視するコメントも数多く寄せられている。
しかし、同時に、2008年に、東京電力社内で、福島第一原子力発電所に想定を大きく超える津波が来る可能性を示す評価結果が得られた際、当時、吉田氏が部長を務めてい本店の原発設備を統括する立地本部原子力設備管理部長であった吉田氏が、「そのような津波が来るはずはない」と主張して対策を講じなかった事が明らかになっており、この事故の原因を作った東電の幹部としての責任もあったのではとのコメントも寄せられている。

一方、今回、原発の新・規制基準が施行された。この新・規制基準は、東京電力福島第一原子力発電所事故を教訓として制定されたとされている。
この新・規制基準の施行に伴い、北海道、関西、四国、九州の電力4社が、相次いで6原発12基の再稼働に向け、安全審査を原子力規制委員会に申請した。
この新基準は、万が一の重大トラブルの際に事態の悪化を食い止める手段を大幅に増やし、地震・津波の影響評価も強化したとされているが、原子炉冷却が困難な時に内部の圧力を下げるフィルター付き排気設備は設置を5年間猶予されるなど、不十分だとの批判もある。
全国知事会議は、原発再稼働をめぐる議論のなかで、原子力規制委員会の対応について「立地地域に説明をしない」、「再稼働のプロセスが不透明」などと国への不満と批判が相次いでいる。
しかしどういう訳か、「原発は安全だ」「原発は経済的だ」「原発は二酸化炭素を排出しない」「原発を受け入れると多額の補助金がもらえ雇用の機会も増える」などと、原発の再稼働・推進の声もある。

福島の原発事故から、まだたった2年ほどしか経っていない。そして、福島の原発事故の処理の確たる見通しも立っていないのに再稼働の申請がされてる。
「原発は安全だ」とは、福島の原発事故が起こる以前においても、それまでの政府と電力会社の宣伝を信用すれば、「100%安全」であったはずだ。
こうした事態を吉田昌郎元所長は、どんな感想を持ち、何を思っているだろうか。

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