スタコラ:2012-05-03

憲法記念日に想う

2012-05-03
神戸

5月3日、大型連休の真っただ中にいる。こうも祭日が続くと、今日はいったい何の日かと暦を確かめたくなるが、今日はまぎれもなく憲法記念日である。朝から暇にまかせて日本国憲法全文を久しぶりに読んでみた。 103 条からなる条文は比較的わかりやすく書かれている。敗戦の混乱期にしかも短期間で作成されたにしてはよく出来ているのではないかと思う。 現在の日本国憲法が公布されたのは、昭和 21 年 11 月 3 日で NHK 朝ドラ「梅ちゃん先生」の時代である。 その時小学 1 年生であった私は、その頃の社会の状況をわずかながら記憶している。

現憲法が、国民主権、平和主義、基本的人権、を基本原理として構成されていることは義務教育でも教わった。 GHQ(占領軍総司令部)の押し付け憲法と非難する人たちもいるが、忌まわしい戦争と圧政の時代を終えて新しい平和を希求する日米の法律家たちの情熱がうかがえる。 この新憲法に触れた当時の人々は、焼け跡の灰かぐらの中で感激に身が震えたにちがいない。

近年、憲法改正が取りざたされるようになった。 さまざまな世論調査のなかで、改正すべきと答える人が過半数を占める場合もある。 改憲論には、現憲法は GHQ の押し付けであり日本国民による自主憲法を制定すべきというものと時代の変化に対応するために改正すべきとするものがあるようであるが、いずれの場合も戦争放棄を謳った 9 条が論争の争点になっている。 たしかに 9 条こそが現憲法の特色であり、これがあるために過去の国際的な武力紛争の埒外に身を置くことができた。 ただ、現在の複雑な国際間で、わが国だけが孤高を保つことは不可能であり、現実に、法解釈を曲げてまで自衛隊の海外派遣が行われている。 現憲法のめだまともいうべき 9 条は、武力の不行使と戦力の不保持を表明したのみであまりにも簡潔すぎるように思える。

憲法は、国のあり方、志を国の内外に表明するものであると同時に、全ての法律の原点になるものである。 それだけにゆらぎないものでなくてはならないが、永遠に不変のものでもない。 人口の増加、環境の変化、科学技術の発達に伴って見直すべき点は多々ある。 その場合、衆参両議院の 2/3 の賛成を必要としている 96 条がハードルとして立ちはだかっている。 この 96 条のみをまず改正できないかと思うのは素人の妄想だろうか。

今後、改憲論はますます盛んになるだろうが、あの敗戦の焼け跡のなかで、平和と自由とささやかな豊かさを希求した当時も人々の気持ちを忘れてはならない。

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