スタコラ:2007-06-18

顧客第一主義

2007-06-18
神戸

前回の「スタコラ」で、社会保険庁の年金問題に話が及んでいた。
私もすでに年金受給者であり、生活費の大部分をそれに頼っている。
受給の手続きをするに当って、何度か社会保険事務所を訪ねたが、いつも丁寧な説明を受け想定どおりの金額を受けるに至っている。
同世代の友人に聞いても感想はさほど違わない。
従って、5000万件もの記録が宙に浮いていると聞いても、いまひとつピンとこない。
しかし、私の実感とは別に、ずさんな書類管理、ずさんな客対応があったことは事実なのだろう。

個人情報の漏洩、保険料の不正免除、年金の集金漏れ、ずさんな記録管理、年金保険料の無駄遣いと、これまでにさまざまなことが社会保険庁の不祥事として報じられてきた。
さらに、5000万件の問題が出てくると、野党は、ここぞとばかり政権与党を激しく追及しはじめたが、参院選への下心が見え見えであまり好感は持てない。
また、追求に慌てた政府が、5000万件を1年で照合し解決するという出来もしないような約束や、責任を相手になすりつけるような発言をしていることも見苦しい。
それにしても、参院選を意識するあまり実態以上に問題が大きくなり、無用の不安を国民に抱かせているような気がしてならない。
ただし、ずさんな管理、ずさんな窓口対応を弾劾された社会保険庁は、改革を余儀なくされ民営化されることになりそうだ。
新しい組織で気分を一新して業務に取り組んでほしい。

会社運営の一手法として、国際規格ISO9001がある。
これは、顧客の要求を的確に捉え、常にPlan(計画). Do(実行). Check(検証). Action(是正処置)を回しながら顧客の要求に応えることを意図した管理システムである。
今までの社会保険庁にこの顧客という概念が正しく存在していたのだろうか。
いつも視線は上役である長官や、所轄官庁である厚生労働省、政治家の方ばかりを見ていたのではないのか。
年金加入者や年金受給者である国民こそが顧客であることを胸に刻んでもらいたい。

経営層は、顧客の要求を的確に捉え、それに応えるために明確な方針を設定する。
その方針にそって、各部門、各階層は、具体的な施策をともなった目標を定める。
目標は、実行の各段階で達成度を検証し、未達成であれば達成に向けた新たな施策を講じる。
これがISO9001の意図するところであり、大方の民間企業が実行していることである。
顧客の信頼を失えば企業はたちどころに市場から姿を消す。

今、親方日の丸の社会保険庁に求められていることは、顧客重視の精神であり、顧客を失えば企業はつぶれるという緊張感であろう。
ここに民営化の意味がある。

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